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小児科の先生との思い出

私は小さいころにひきつけを起こして呼吸停止になってから小児科を定期的に受診して脳波を取っていた。たぶん中学生頃まで。食後に白い粉薬を服用していたことは覚えている。
母は「何かお薬処方されてたわよねー」とアバウトだが、父が言うにはてんかんを疑われていたようだ。

保育園時代から中学校まで、同じ小児科の先生にかかっていた。
私からすると何か月かに1回、母に「明日、病院の日よ。早く帰っていらっしゃい」と言われて学校から急いで帰り、母と病院に行って、でも「はい、深呼吸してねー」と言われて寝てしまって、起きると検査が終わっているという状況で、あまり覚えていない。
結果を見ての診察があったはずなのだけれど、寝ぼけていたのかほとんど記憶にのこっていない。

ただ、一つ、鮮烈に覚えている出来事がある。

小学校の高学年の頃だったと思う。ちょうど受診の数日前に高木彬光の「白昼の死角」という小説を読んだ。
コンゲームというのか、詐欺師が主人公の話だ。
夢中になって読んだ私は、小説の面白さにすっかりとはまり、診察のときに先生に「あなたは将来何になりたいの?」と尋ねられて、「詐欺師!」と答えた。そして、小説で得たばかりの知識、つまり詐欺師がいかに効率がいい犯罪で真面目に働くことがどれほど馬鹿らしいことなのかというようなことを意気揚々と語った。

数日後、先生からハガキが来た。
そのハガキには、真面目に働くことの大切さ、犯罪を志すなどと考えないで欲しいこと、が丁寧に真剣につづられていた。
これ以外、その先生からハガキなどもらった覚えはない。おそらくこの時先生はわざわざハガキを書いてくれたのだと思う。

その時には、ぴんと来なかった。なんとなく恥ずかしいような感じだけがあった。
でも、あのハガキは、その後の私の人生の中で大きな意味を持っていたと思う。真面目に働くことの大切さを正面から照れることなく考えるようになったきっかけの一つだと思う。

この先生のことを思い出すとき、子どもに真剣に接することがその子の将来に大きな影響を与えることがあるのだ、と思える。
私は子どもも持たず、人生に何も残さないかもしれない。
でも、私もいつか、誰かの将来に役に立つことが出来たら、話せたら良いな、と思う。
(そんな立派なことが言えるようになるように、まずは自分を磨かなきゃね!)

もう苗字しか覚えていないこの先生。たぶん母より年上だったと思うし、もうご存命かも分からない。二度と会うことはないだろうし、先生にとっても私はただの一患者に過ぎず、覚えているはずもない。
だけど今日、会社からの帰り道に突然しみじみとこの先生とのこの出来事を思い出した。

先生、ありがとうございます。
おかげさまであの後私は詐欺師を目指すなどと言わず、それなりに真面目に生きてきました。
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素晴らしい出会いをされたんですね

あゆみ様、こんにちは。

ほんとステキだなぁ・・・その先生はご自分の患者さんときちんと向き合える方だったんでしょうね。
そんなドクター、私は一度もお目にかかったことがありません。うらやましい限りです。

出会いといえば、私も1人だけ過去にいます。

以前お話ししたかも知れませんが、私は親や先生にほぼほめてもらったことのない人生でした。
あゆみ様のように成績優秀者ではなく、苦手なことを数えた方が多いぐらいでダメ出しされるばかり。自分に全く自信が持てませんでした。

新卒で就職活動をした頃は幸いバブル崩壊前で、どうにか中堅企業1社にもぐりこむことができた私でしたが。
ただそこで私の指導役だった課長級の方がくれた次のひと言が、その後の私の社会人人生の大きな支えになったんです。

「君は決して『できない』人じゃないよ。他人の言ったことを素早く理解できる力を持っている。ただちょっと他の人より時間がかかってしまうだけだから、落ち着いてやればいいんだよ。自信を持ちなさい」
こんなことを言ってくれたのは、この方がはじめてで。
ほんとうにうれしく、言われたときの光景とともに今でも思い出します。

以上、私の思い出話の方が長くなってしまい恐縮ですが、感想として書かせていただきました。

それでは。

Re: 素晴らしい出会いをされたんですね

> 明日香さん

こんにちは。
そうなんです、いい先生だったんだろうと思います。そして人生の初期にそういう先生に長く診てもらったことは私の医師という職業に対する信頼感につながっているかもしれません。その後の人生ではひどい医師にもあたったことはありますけどね。でも今ずっと診てもらっているメンクリの先生もいいお医者さんですし、やっぱりお医者さんて影響力が大きいので、いい先生に当たるとありがたいなと思います。
とはいえ、いい出会いがお医者さんである必要もないわけで。明日香さんは明日香さんでいい方との出会いがあったようで、良かったです。明日香さんの心にそれだけ響いたということは、その方は口先だけではなく、それまでしっかりと明日香さんを見てきたうえで心からの言葉だったのでしょうね。
苦しい時に思い返せる言葉や人がいるというのは大きいと思います。それが心の支えになりますよね。どうぞその思い出を大切になさってください。
私も時々、いい思い出を振り返ると心がほんわりします。
プロフィール

あゆみ

Author:あゆみ
大人の(成人)発達障害です。「発達障害のわたしのこころの声」(学研)の著者です。
本には書けなかったこと、本を出してからの日々を綴っています。
会社員と一人暮らしが出来ていているのに、発達障害は確かなようです(診断済み)。



発達障害のわたしのこころの声 (ヒューマンケアブックス)

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