この辺タクシー拾えますか

友人たちと旅行に行ってきた。
私は一人旅も全然苦にしないが、気心の知れた友人とであれば一緒に旅行をするのも好きだ(長期間の二人旅とかは無理だが)。

旅館を出ようとして、目的地まで歩くには少し遠そうだねとタクシーを使うことにした。
友人Aが、旅館の人に「すみません、この辺タクシー拾えますか?」と尋ねると、旅館の人が「呼びましょうか」と聞いてくれたので、「じゃあお願いします」と呼んでもらった。

タクシーが来るのを待っていると、その友人Aが「こういう言い方すると旦那に嫌がられるんだよね」と言う。友人Bが「どういこと?」と尋ねると、「タクシーを呼んで欲しいならタクシーを呼んでくださいって言えばいいって。はっきり言えばいいのに、って言うんだよ」とのことだった。
友人Bは「えー、でもAちゃんの言い方の方が柔らかくていいじゃない?」と言っていたが、私はびっくりした。

そうか、拾えますかと尋ねられたらそういう意味に受け取るのか。だから旅館の人は呼んでくれたのか。

私も友人Aの旦那さんのように「依頼ならはっきり内容を言ってください」と思ってしまう。それでも友人Aの旦那さんは、それが婉曲表現だということは分かっているようなので、私よりはマシだ。

私だったら質問の形式で尋ねられたら質問だと思っちゃうよ。
私が旅館の人だったら「拾えますよ」あるいは「うーん、このあたりあまりタクシー通らないですね」で会話終了。悪気はなく、私としては尋ねられたことに答えたつもりだ。でもお客さんからすれば「うわ、感じ悪!」かもしれない。

友人AとBに「私はよく逆にもっと婉曲に言えって言われるんだけどね」と言うと、友人Aはにやにや、友人Bに至っては爆笑。
「ちょっとー、なんでここで爆笑する場面?」と言うと、「いや、一応分かってるんだな、と思って」と言われた。
「分かってるっていうかさ。まあ、Aちゃんと私を足して2で割るとちょうど良さそうだね」と言ってみた。
私は婉曲な物言いが出来なくて誤解されていることがあるようだが、婉曲な物言いが出来る人は出来る人で文句言われたりしてるんだなー。
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発達障害者は責任転嫁しよう!

以前、メンタルクリニックの先生に「うつ病ですね」と診断されたとき、私は「絶対違う」と思った。
絶対違うと思った根拠はいくつかあるのだが、その一つは「私は自分を責めるタイプではない」ということだ。
うつ病は、何か問題があったときに自分の責任だとか自分が悪いとか思う自責感の強いタイプの人に多いという。

私は、もちろん反省することもあるし、自分を責めることもあるけれど、自責型か他責型かどちらかに分類しろと言われたら、どちらかといえば他責型ではないかと思う。他人が悪い、と思うタイプだ。
でも、それは私が自己肯定感を持ってこられたことにつながっているのではないだろうか?

ありがちなシチュエーション。定型発達の上司や先輩と発達障害の部下や同僚。
(発達障害者=発、定型発達=定)

社員のAさんが発に業務の依頼をする。
発「あ、いいですよ。大丈夫です」
発が定型の上司に報告。
定「それは手続きがあるだろ。ちゃんと書類に書いてもらえ」
発「すみません」

翌日、社長Bさんが業務の依頼をする。
発「すみません、手続きがあるので書類にご記入いただけますか」
社長Bから上司に強いクレーム。定型の上司、怒る。
定「社長だろ!」
発「でも昨日、社内手続きを守らせるようにとおっしゃいました」
定「それは普通の社員の場合!」
発「そういう例外はおっしゃいませんでした。それでは部長はどうしたらいいでしょう。あと例えば顧問は手続きを守っていただくべきですか」
定「屁理屈こねるな! 常識で判断しろ!」
発「……(理解できない)」
定(素直じゃないやつめ。なんで申し訳ありません以後気を付けますと言えないんだ)

これは定型発達の上司から見たら最悪に感じの悪い使えない部下だ。言ったことの上げ足ばかりとり、常識的な判断が出来ず。自分の非を認めない。

だけど、発達障害者の側は大真面目に「分からない」
社長は例外なんて言わなかった。言われたルールを適用したら怒られた。常識と言われてもそれ何? 屁理屈って、質問してるつもりなんですが。
そして「申し訳ありません。以後気をつけます」と言ってみたところでどうせ分かってないのだから次は同じ間違いを繰り返してさらに怒られる。

こういう場合、発達障害者の立場としては「わけの分からないことで怒られて責められている」のだ。
これを自分のせいと思ってしまってはそれは落ち込む。うつにもなろうというものだ。
でも、社会は「常識」「空気を読む」を要求する。理解できないことを説明もせずに理解しろと言う。でも、出来ない。出来ないものは出来ない。努力してないとかではなく、努力しても出来ない。努力は大事だ。でも努力では埋まらない部分がある。

もう、いいんじゃないか。
これは、説明を十分してくれない上司が悪いのだ。質問に答えてくれない上司が不適切なのだ。明確化されていないルールが問題なのだ。

道を尋ねられる

私は方向音痴だ。
世の中方向音痴な人は珍しくないと思うが、おそらく群をぬいて方向音痴だ。
これはやっぱり空間認識能力の弱さが出ているのかなと思う。
(知能検査でも私の視覚情報の認識能力はかなり低く、分野によっては知的障害とのグレーゾーンぐらいのものもあった)

例えばもはや4年も通院しているメンタルクリニック。
最寄り駅から徒歩数分の立地で、大通り沿いでとても分かりやすいはず。
しかし、地図や駅の掲示を見ずに行かれるようになるまでにどれほどかかったことだろう。
そしてこのビル、私が通院を始めた頃は工事中で、目立つ工事資材が置いてあった。それを目印にしていたので、1年後に工事が終わったときには目の前にクリニックがあるのにどうしてもたどり着けず、1本道の大通りを行きつ戻りつしたこともあった。
今でも、手前の目立つ建物を過ぎたあたりから、「あれ、まだかな? 行きすぎちゃったかな? あれ?」と思いながら真剣に建物の表示を見て歩いている。今は隣のお店の看板を目印にしているので、このお店が変わってしまったらまたきっと見失うだろう。

なお、こんな私が社会生活を送れているのは、「時間には絶対に大幅な余裕を持って行動する」などの具体的対策もあるのだけれど、心理的対策、つまり「どうして私っていまだに覚えられないのだろう……」などと落ち込んだりしないようにする対策も取っている。
上述の例でいえば「4年診てもらっている先生の顔だって未だに覚えられないのだから、道筋が覚えられなくてもしょうがないよね」と、諦めるのも肝心だ。人に言うと「すごい開き直りだね」と言われるのだけれど、私にとっては筋が通っている。
(そして、「4年診てもらっている先生の顔が未だに覚えられない」ことについては、「診察室で会えば分かるんだからそれで十分」と思っている)

ところがこんな私だが、何故か人によく道を訊かれる。
もちろん、教えてあげたい! 方向音痴の私は人に道を尋ねることが多いので、お返ししてあげたい気持ちは満々にある。
……しかし、100回通った道でも、私が人に道を訊かれて答えられることは多くない。
ただ、最近は見える範囲の建物を訊かれたことが多く(高層ビルが林立している地域で慣れない人には区別がつかない)、何度か連続して教えてあげることが出来て、とても誇らしい気分になった!

私はよく人に「不愛想」とか「怒った顔してる」とか言われ、人から見れば無表情なことが多いらしく、話しかけづらいと言われたりする。(しかし、普通の人はそんなに普段から意味なく一人の時でもにこにこしてるわけ?と疑問に思うが)
そんな私がなぜ、こんなによく道を尋ねられるのだろう。
私の道の訊かれっぷりも相当なもので、私も迷っているときや、明らかに私だけ周りの人と人種が違うような外国でも頻繁に尋ねられる。

周囲の人に尋ねてみると、まず
1.女性には尋ねやすい
うん、これはまあ、そうかなとは思う。
2.地元の人に見えやすい
ん? どういう意味? と思ったところ……
「カジュアルな格好をしている」という意味らしい。

確かに私、服装も化粧もいい加減だもんね。
都内有数の繁華街だろうがオフィス街だろうが海外のリゾート地だろうが、適当な格好をしている。地元の住民がちょっとコンビニに買い物にいく様子に見えるのかもしれない。

Your English is ......coherent.(あなたの英語は……理路整然としてますね)

初対面のオーストラリア人と1時間ぐらい話をして、そろそろ切り上げる場面でのことだった。
そのオーストラリア人がタイトルのセリフを私に言ったのだ。

なかなか言われない表現なので、「褒め言葉ですか?」と尋ねてみると「もちろん!」と言われたのでお礼を言っておいたが、やはり違和感がある。
ちなみに「言われない」というのは、「あなたの英語は」というセリフに続いては言われないという意味で、英語でも日本語でも「理路整然としている」とか「論理的」とかはよく言われる。(←これはポジティブな表現を使ってくれる場合で、悪い意味では理屈っぽいという意味で、そして社会生活上は「理屈はそうでも空気読め」と叱られる)

それを違和感として感じたのは、「英語が」理路整然としているというのは変でしょう、という意味だ。
理路整然としているのは私の話であって、言語の問題ではないはず。
英語がうまいとかなら英語に対する評価として分かるけれど。そして私の経験上、英語のネイティブはノンネイティブにそういう「うまさのレベル」(goodとかfluentとか)を示す言葉を使うものなのだけれど。

なので、そう指摘すると、「そういうところがね」と笑われた。

歯医者

よく発達障害のある人は曖昧な表現が苦手だとか先の予定が見えない状況が苦手だとか言われる。
私もそれなりにそういう部分はあるのだけれど、それでもそれなりに長い人生の中で、どうやらそれはそういうものらしいとずいぶんと我慢したり流したり分からなくても放置したりすることが出来るようになったと思っている。
ただ、極限状況に置かれると、そういう「学習したこと」というのはふっとびやすい。

今日の極限状況。「歯医者」だった。

歯医者さんて何であんなに怖いんだろう。本当に怖い。
昔、親知らずを抜くことになったときなんか、もう日程が決まった日から怖くて怖くてあまりにも怖すぎてそれしか考えられなくて、死刑執行日が決まった死刑囚のような気持ちだった(実際の死刑執行で執行日が死刑囚に知らされることはないが)
一応、年に何度かは虫歯チェックとクリーニングに行くようにはしているが、本当に毎回震え上がっている。

今回の犯人は、数日前の取引先からのお土産だった。
海外の甘ったるいチョコレートの詰め合わせで、「あゆみさん、どれがいいですかー」と部内を回ってきたときに「すごく疲れてる気がするから甘そうなのがいい」と(←普段私は甘党ではない)キャラメル系のチョコを選んだ。予想通りというか、予想以上の激甘のチョコで、その意味では目的通りだったのだが。
「あれ、なんかこのチョコ、石が入ってる?」と思って出してみると詰めていた部分が取れてしまっていた。

今日も打ち沈んだ気分と重い足取りで歯医者さんへ。
とりあえずチェックして、作り直した方がいいということになり、型を取ることになった。
なんか型を取る粘着質なゴム?みたいなものを咥えさせられると、「はい、じゃあこれちょっと噛んでてくださいね」と歯科医師はどこかに行ってしまった。
「ちょっと噛む」って、どれぐらいだよ! 大体ちょっとって、力の加減のこと? 時間のこと??
いらっとしながらとりあえず噛む。
噛んでちょっと待ち、ちょっと待ち、またちょっと待っているのに全然終わらない。
口の中が器具で圧迫されて痛い。
我慢していたのだがかなり痛くて我慢できなくなり、手を挙げた。
が、誰も反応しない。
手を振った。
誰も反応しない。
このあたりでかーっと来て、バシンバシンバシンと手で膝を叩いて音を立て、手を挙げた。
これでやっと気づいてもらうことが出来て誰かが寄ってきたので、左手の手のひらに右手の指で「なんぷん?」と書いた。
するとその人は「5分ぐらいです」と答えて立ち去った。

5分て、なんだよ! 5分かかるのか、5分経ったのか、残り5分なのか!
さすがにそれを手の平に書くのは厳しいので諦めた。痛いのは我慢した。

するとやがて「はい、そろそろいいですよー」と抜きに来たのだけれど、やはり相当外すときにも痛く、軽いショック状態でしばらく休憩を入れたほどだ。
その後のクリーニングでもうがいするたびに吐き出す水が真っ赤になった。クリーニングの際に多少出血することはしょうがないこともあるが(自分の歯茎の状況等にもよるらしいし)、真っ赤っていうのは初めてだ。

次回の予約を取るときに、受付で「次は違う先生にしてください」と頼んだ。
過去にもどこかの記事で書いたような気がするが、私はこういうことをためらわない。「先生に悪いじゃない」「次、顔合わせたら気まずくない?」なんて全然思わない。
そもそも顔合わせたって見分けられないしね(私は相貌失認です)

で、帰宅して、とりあえずアルコール消毒をせねばと思いビールを飲もうとしたのだけれど、口の中の違和感がひどい。口の周りを上から触ってみると固くなってはれ上がっている。虻に刺された痕のような感じだ。
うわー、アルコール消毒どころじゃないかも……いったいどうなっちゃってるの? とおそるおそる口の中を見てみると。

詰め物が入ったままだった。なんか白い円柱形の綿みたいなやつ。
即、歯医者に電話して、留守電だったが「詰め物が残ったままでした。今日の治療はあまりにも痛すぎましたし、不適切な治療を受けたように感じています。ご確認ください」と吹き込んだ。

これは、怒っていいと思う。
だけど、普通の人はたぶん「こんなには」怒らないんだよね。

ちなみに、もう10年来行っている歯医者さんで、普段はこんな目に遭ったことがない。たぶん土曜日だったのが外れた要因かな、と思わなくもないのだけれど(オフィス街なので、診療のメインは平日)。
プロフィール

あゆみ

Author:あゆみ
大人の(成人)発達障害です。「発達障害のわたしのこころの声」(学研)の著者です。
本には書けなかったこと、本を出してからの日々を綴っています。
会社員と一人暮らしが出来ていているのに、発達障害は確かなようです(診断済み)。



発達障害のわたしのこころの声 (ヒューマンケアブックス)

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